最後の瞬間まで、走り切りたい。|トレイルランナー 秋山穂乃果
  • Interview : Yuriko Kobayashi
  • Photographs : Moe Kurita

2025.08.05

トレイルランニングとは、林道や登山道など舗装されていない自然の中の道を走る陸上競技の一種。秋山穂乃果さんはそのプロ選手として、標高2000mにも及ぶ山々の中を50〜100kmほど走るレースに挑み、近年目覚ましい活躍を続けている。長いレースでは14時間ほど走り続ける過酷な競技。それを心から楽しみ、さらなる成長を目指す彼女に、トレイルランニングに賭ける思いと、その情熱を支えるものについて聞いた。
トレイルランナー 秋山穂乃果さん
―トラックを走る陸上競技から走ることを始めたと聞きました。もともと走ること自体が好きだったのですか?
秋山:体を動かすことは好きで、中学時代は水泳部でした。高校でも何か続けたいなと思っていたのですが、スポーツって道具とか色々お金がかかるじゃないですか。そんな中で、陸上なら体ひとつでできるかなと思って(笑)。でも、トラックを走り続けるのって苦しいんですよ。大学でもトラック競技を続けていましたが、それが大好き!っていう訳ではなかったかもしれません。
―大学ではスポーツ生理学を専攻していたそうですね。将来的にも陸上に関わる仕事がしたかったのですか?
秋山:なんだかんだずっと陸上を続けていたので、スポーツメーカーに入ってシューズの開発をするとか、何か裏方で選手を支えられる仕事をできたらいいかなとは思っていました。ただ、私の学歴ではちょっと難しいなかなと。それで考え方を変えて、昔から好きだったお笑い番組に携わる仕事をしようと、テレビ局を受験して入社しました。
トレイルランナー 秋山穂乃果さん
―すごい方向転換ですね!
秋山:でも番組制作の部門は花形で、狭き門。私は体力だけが取り柄みたいなところがあったので、報道局のカメラマンとして配属されました。入社して3年ほどはずっと警察回りで、8kgほどある大きなカメラを担いで逮捕・送検される被疑者を追いかけて撮影するという仕事をひたすらやっていました。
―社会人になってからは走っていなかったのですか?
秋山:トラック競技はやっていなかったのですが、会社の上司がトレイルランニングを趣味でやっていたこともあって、入社2年目くらいの時に初めてトレイルランニングのレースに出場してみたんです。50kmほどのレースだったのですが、道はドロドロだし、アップダウンがすごいし、とんでもなくお腹が空くし、なんてワイルドなレースなんだと驚きました。それまで走っていたトラックと全然勝手が違っていて、思ったようには走れなかったのですが、とにかく新鮮で楽しかったんです。自分より一回りくらい年上の人がすごいタイムで完走していて、なんだかすごい世界だなと思ったことを覚えています。
―それでトレイルランニングの魅力に開眼したんですね。
秋山:自然の中を走ること自体が楽しいですし、あとはトラック競技に比べて、自分の工夫次第でどんどん成長できるという点が面白いですね。トラックを走っていた頃はどれだけフォームを変えてもタイムが伸びなかったんです。でもトレイルランニングではフォームはもちろん、食料や水分補給のタイミングや摂取するものの内容、呼吸法、体づくり、メンタル面など、様々な部分で自分に合った方法を取り入れていくと、いい変化があらわれる。試行錯誤しながら少しずつ前に進んでいけるというのも、好きなところです。
トレイルランナー 秋山穂乃果さん
トレイルランニングに打ち込むための選択。
―テレビ局のあと、警察官に転身したと聞きました。
秋山:カメラマンとして被疑者を追っていたとき、もっと被疑者に近づきたい!って、常に考えていたんです。今思えばすごく単純な発想なのですが、だったら警察官になったらいいのではと(笑)。 山を走ることも好きだったので、長野県の警察署を希望しました。長野県は北アルプスを擁する県なので、警察の中に山岳救助隊があるんです。いつかその仕事もしてみたいなと思っていて、運よく入隊することができました。
―山岳救助隊での経験は、トレイルランナーとしての活動に何かいい影響を及ぼしていますか?
秋山:めちゃくちゃ及ぼしています!まず険しい山を歩く技術や体力を培えましたし、さまざまな遭難の現場に立ち会ったことで、熱中症や凍傷など、山中で起こりうるリスクについても教えていただきました。山で生き抜く生命力みたいなものも学んで、それが今、とても役立っています。
トレイルランナー 秋山穂乃果さん
―現在は警察を退職して、ヨガインストラクターとして働きながらプロ選手として活動されているんですね。
秋山:警察の仕事には大きなやりがいを感じていましたが、徐々に、もっと真剣にトレイルランニングに向き合いたいという思いが強くなってきました。特に山岳救助隊は人の命を扱う仕事なので、中途半端な気持ちでは務まりません。働きながらトレイルランニングを続けるにはどうしたらいいかと考えた時、それまで趣味で続けていたヨガが最適なのではと思ったんです。特にホットヨガは高い室温の中でストレッチするので筋肉が伸びやすいですし、気温が高い中で走るレースの耐性もつきます。働いている時間もトレイルランニングにプラスになることができるので、ありがたい環境です。
トレイルランナー 秋山穂乃果さん
―ヨガを深めることによって、何か心境の変化はありましたか?
トレイルランナー 秋山穂乃果さん
秋山:呼吸法の大切さや、それによってメンタルをコントロールできることを知れたのは大きいですね。以前は勢いだけで走っていた部分が大きかったのですが、日々、自分の心や体としっかり向き合ってケアしたり、整えたりすることの重要さを学びました。rounのプロダクトを使い始めたのも、そんなふうに「心と体の調和」が大切だなと感じ始めた頃でした。
―rounで愛用しているアイテムにはどんなものがありますか?
秋山:一番頼りにしているのはスポーツバームです。練習で走った後にスポーツバームを使ってマッサージをすると足がすごく軽くなって、疲労が軽減される実感があります。走ったあとは交感神経がたかぶって興奮状態が続くのですが、爽やかな香りのおかげでリラックスできるのもいいですね。もともと寝つきが悪く、眠りも浅かったのですが、寝る前にCBNカプセルを飲むようになってからは朝までぐっすり眠れるようになりました。このふたつはお守りのような存在です。
roun CBDスポーツバーム
トレイルランナー 秋山穂乃果さん
―今後の目標を教えてください。
秋山:世界最高峰のトレイルランニングレースのひとつウルトラ・トレイル・デュ・ツール・デュ・モンブラン(UTMB)の101km部門CCCに出場し、日本人女性として初めて表彰台に乗ることを目標にしています。ゆくゆくはメインレースである171kmのレースにも挑戦したいですね。自分で設定した目標タイムをクリアすることに満足せず、最後の瞬間まで100%出し切って走り続けること、さらに上を目指して努力できる強さを身につけたいと思っています。
トレイルランナー 秋山穂乃果さん
  • Profile

    秋山 穂乃果/ Honoka Akiyama

    兵庫県西宮市出身。ヨガインストラクターとして働きながらトレイルランナーとして活躍。2022年『全日本スカイランニング選手権SKY』優勝。23年『全日本スカイランニング選手権SKYULTRA』優勝。24年『スカイランニング世界選手権SKYULTRA』スペイン準優勝、『伊豆トレイルジャーニー』準優勝。25年には石川県加賀市で開催された「加賀スパトレイルエンデュランス100 by UTMB」に参戦。他の選手を圧倒する走りを見せ、女子1位、男女総合でも4位という快挙を成し遂げた。
    Instagram: @honomosquito

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