植物を通じて、衣食住を伝える花屋でありたい。|The little shop of flowers 壱岐ゆかり
  • Interview : Eri Ishida
  • Photographs : Satoko Imazu

2025.02.19

東京・神宮前の鬱蒼と茂る緑に覆われた一軒家に店を構え、11年にわたり“街の顔”として愛されてきた花屋〈The Little Shop of Flowers〉。昨年、神宮前を離れ祐天寺の住宅地エリアに移転した理由について、「鑑賞するための花だけでなく、植物の視点でこれからの衣食住を育んでいける場がつくりたかった」と話すオーナーの壱岐ゆかりさんに訊いた、日々の生活における植物との付き合いかたと、愛用しているrounのヘンプバームについて。
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―神宮前では、レストラン〈eatrip〉と隣り合わせに店を構えていましたが、移転先の祐天寺では一つ屋根の下で1階を〈The Little Shop of Flowers〉(以下、リトル)、2階を〈eatrip kitchen〉として、全体をくくる店名も〈babajiji house〉と、より家のようなムードが感じられる場所になりましたね。ある種、生活感のない都心部から住宅地へ移ったのには、どんな思いがあったのでしょうか?
壱岐:神宮前でお店をオープンしたのはもう十数年前になりますけど、当時私自身は深い考えを持ってレストランと花屋を組み合わせたわけではなかったんです。ただ、それ以前からアメリカのカリフォルニアとつながりが強くて、〈eatrip〉を主宰する野村友里さんが修業をしていた1970年代から続くオーガニックレストラン〈シェ・パニース〉をはじめ、いいレストランのエントランスには必ずと言っていいくらいお出迎えの気持ちを表すような素敵な装花がされていて。そういう光景を見ていたから、私の中で少しずつ自然と料理と装花はセットという感覚が芽生えていったんだと思います。
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壱岐:そこから私は神宮前店のオープンと同時に出産して、花屋の仕事と子育て、両方向からの怒涛の学びの日々がはじまって……。ほんとに少しずつでしたけど、息子が大人になるころの未来について考えるようになっていきました。野菜やお米に生産者がいるように、花にも生産者がいるあたり前のことにも気づけたし、生産者を訪ねるようになると、そこには残したいと心から思う風景があって。その先に、料理につかう食材も、装花につかう花も、根っこでは同じ植物だよねと、ようやく共通の価値観が持てるようにもなった。移転にはこれとは別に原宿の都市開発という理由があったけれど、新たに場所をつくるのなら、それぞれに「植」と「食」の視点で「衣食住」の楽しみかたを提案しながら未来を考えていく家のような場所にしたいねと探していくうちに、この地域との出合いがありました。
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―「植物の視点から衣食住を提案する」とは、部屋に花を飾るだけではない植物の楽しみ方ということでしょうか。
壱岐:花を植物として捉えるようになると、花にも季節ごとに旬があることにより意識的になって、日本独特の文化の主役は植物だったと思えるくらい、衣食住のあらゆるものに植物が活かされてきた歴史を知る機会も増えていきました。便利なほうへ流れていく時代の中でも、これだけは絶対に絶やしてはいけないと細々とでも繋がれてきたような知恵を、今ならまだギリギリ受け取れるタイミングなんだということもわかってきて。だからと言って西洋的なものを否定するつもりはないんです。むしろ西洋的なものに囲まれた現代の暮らしの中で、日本の文化を再発見するよろこびや、混ぜ合わせの楽しさを伝えていきたいと思っています。
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―rounのヘンプバームをスタッフみんなで愛用されているそうですね。使用感について教えていただけますか?
花屋はもう年中、切り傷や手荒れが絶えない仕事だけど、特にこのバームを使い始めた12月は、それがピークを迎える時期だったんです。クリスマスリースからお正月飾りまで、枝ものも多いしユーカリはベタベタするしで、手が傷だらけで自分の手をまじまじと見るのが嫌になるくらい、ケアしても追いつかない状態が年末まで続くという。だからスタッフの間でもハンドクリームにバームに、常にいろんなものを試している中で、CBDは抗炎症作用が期待できると聞いて使ってみたら、これは特に私だけではなくて全員が「いい!」って、反応が良かった。ねっとりしたテクスチャーで伸びもよくて、肌をコーティングしつつもじわじわ浸透していく感じがします。あと、香りが“カッコいい”。
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―香りがカッコいいっておもしろい表現ですけど、確かにそうですね。媚を売らない“効きそう”な植物の匂いとも言えるかもしれない。
壱岐:私が甘くてコスメっぽい香りが苦手だから余計にそう思うのかもしれないけれど、アロマティックというよりも、効かせるための植物を詰め込んだらこんな香りになりましたっていう感じもしますよね。リトルでも、夏になるとドクダミを摘んできて虫除けのチンキを作ったり、最近だと昔の日本では松の木が葉から樹皮まで、民間療法として万能薬のように使われていたというのを教えてもらって、いろんな取り入れかたを試しているところなんです。このバームも、どこかこの延長線上にあるものという感じがします。植物をいつでもサッと取りだせる形で携帯しているような安心感があるというか。
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植物の力を最大限に生かして傷を癒す軟膏をイメージしてつくられたヘンプバーム。
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ねっとりしたテクスチャーはハゼの木の実から採取した木蝋で、肌に膜を張ってくれるような役割がある。
―確かに、rounのアイテムは自然由来の原料だけでいかに効果を出すかというところに重きが置かれています。CBDと相乗効果が生まれるような、肌の修復や抗菌作用のあるヤロウや沖縄の植物タマヌオイル、ヘンプシードオイルなどが配合されていて。
壱岐:「植物ってすごいね!」って体感できることが増えると、その植物のことが知りたくなりますよね。即効性のある医薬品とは違って、じわじわと根本的に良くなっていくのが実感できると、自然の力で治せるんだって自信にもなる。この春から、しばらくオランダで暮らすことになったので、薬箱にどんなものを入れていこうかと考えているところなんです。もちろん緊急時には即効性のある薬も必要なのだけど、慣れない土地で暮らしていくのに植物の効能が感じられるものがあると安心感にもつながる。その一つにこのバームも連れていきたいと思ってます。
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  • Shop Info

    The Little Shop of Flowers

    東京都目黒区祐天寺1-22-7 babajijihouse 1F
    03-6452-3723
    Instagram: @thelittleshopofflowers

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